冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
広い室内にいたのはキースとラケルだけで、いつも響いている威勢のいい掛け声や鍛錬する騎士たちの姿はどこにもない。一体に何をするつもりなのか疑問に思ったセシリーに、キースはすぐ教えてくれた。
「そもそもセシリーさん、あなたをこちらにお迎えしたのはクライスベル商会との友好を結ぶため、という理由もあったのですが、もうひとつ、別の目的をメイアナの喫茶店で話していたのは覚えていますか」
「ああ、そうでした! たしか、節刻みの舞踏会……でしたっけ?」
すっかり忘れていたセシリーは、他ならぬキースから先日頼まれた内容……団長と節刻みの舞踏会へ出るように言われたのを思いだし、ぱんと両手を打つ。王都に来てまだ日が浅いセシリーは、あまりこの行事に付いてよく知らない。
数百年前の大いなる災厄を封じた聖女たちに敬意を表し、始められたとされるこの舞踏会は、年に二度、王都の中心に立つ時計塔にて行われるらしい。国中から集まる多くの貴族たちが王都に落とす金額は膨大で、それ目当てにわざわざ出向く行商もいると聞くような大きな催し。
そこで騎士団長と踊れなどと言われるのだから、大勢の注目を浴びるのは間違いない。以前なら、リュアンを嫌っていたこともあり絶対にお断りだったが……騎士団で働く内に彼にもよいところがあるのは分かってきたので、今までできなかったことに挑戦するというのなら、背中を押してあげたい気持ちもある。
「そもそもセシリーさん、あなたをこちらにお迎えしたのはクライスベル商会との友好を結ぶため、という理由もあったのですが、もうひとつ、別の目的をメイアナの喫茶店で話していたのは覚えていますか」
「ああ、そうでした! たしか、節刻みの舞踏会……でしたっけ?」
すっかり忘れていたセシリーは、他ならぬキースから先日頼まれた内容……団長と節刻みの舞踏会へ出るように言われたのを思いだし、ぱんと両手を打つ。王都に来てまだ日が浅いセシリーは、あまりこの行事に付いてよく知らない。
数百年前の大いなる災厄を封じた聖女たちに敬意を表し、始められたとされるこの舞踏会は、年に二度、王都の中心に立つ時計塔にて行われるらしい。国中から集まる多くの貴族たちが王都に落とす金額は膨大で、それ目当てにわざわざ出向く行商もいると聞くような大きな催し。
そこで騎士団長と踊れなどと言われるのだから、大勢の注目を浴びるのは間違いない。以前なら、リュアンを嫌っていたこともあり絶対にお断りだったが……騎士団で働く内に彼にもよいところがあるのは分かってきたので、今までできなかったことに挑戦するというのなら、背中を押してあげたい気持ちもある。