冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
誘拐事件①
結局、急いで出たセシリーの姿をラケルは見つけられなかったようだった。キースはどこかへと出かけてしまい、執務室にひとり戻ったリュアンが惰性で仕事をこなしていると、気付けば夜空には星が出ていた。
(……同じ場所を殴りやがって、キースの奴)
じんじんと熱を持つ頬を押さえて溜息をこぼし、自室に戻ろうとした彼が席を立ち上ったところで、慌ただしい足音が近づき、誰かが扉を開け放つ。
「――団長殿、どういう事なのです! セシリーはどうしているのです!?」
「待って下さいってば!」
そこではセシリーの父オーギュストが、憤怒の表情で肩を上下させてリュアンを見ていた。隣では暴挙を止めようとしたロージーが不安そうな眼差しを瞬かせる。
「どういうこととは、一体なにが?」
ろくに頭が回らない状態だったリュアンは、覚束ない足取りで彼の前に出ると理由を尋ね……それを聞いて背筋に冷水が注がれたように震えた。
(……同じ場所を殴りやがって、キースの奴)
じんじんと熱を持つ頬を押さえて溜息をこぼし、自室に戻ろうとした彼が席を立ち上ったところで、慌ただしい足音が近づき、誰かが扉を開け放つ。
「――団長殿、どういう事なのです! セシリーはどうしているのです!?」
「待って下さいってば!」
そこではセシリーの父オーギュストが、憤怒の表情で肩を上下させてリュアンを見ていた。隣では暴挙を止めようとしたロージーが不安そうな眼差しを瞬かせる。
「どういうこととは、一体なにが?」
ろくに頭が回らない状態だったリュアンは、覚束ない足取りで彼の前に出ると理由を尋ね……それを聞いて背筋に冷水が注がれたように震えた。