冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「私も当然抗議はしたさ、さすがにもう結婚まであと半年を切っていたし。でもな、彼はこの話を呑まなければ、伝手で紹介してくれた太筋の顧客との取引をすべて引き下げさせると脅してきたんだぞ。そんなことになれば、商会は終わりだよ……」
「ひっどいわね。もしかして、あの、イルマって女の家が悪いの?」
「さあなぁ。彼女はオースティン侯爵家の娘だという話だが、そこがイーデル家に働きかけたのか、マイルズ君がイルマ嬢を気に入ったのが先なのかは分からないんだ。だがとにかく、クライスベル商会を存続させ、従業員たちを養うためには婚約を解消させるしかなかったのだよ。すまない、すまない娘よ、どうかわかってくれ……」
オーギュストは体を起こすとうつむき、涙ながらに謝罪してくる。しかし……。
――スパスパン。スパパパパパ。
セシリーはそれでも納得がいかず、父をすわった目で見つめつつ、再度無言で平手を往復させた。
「や、やめふぇくれっ! ここは誤解が解けた親子が、お互いを慰め合うのが様式美ってものだろう!?」
「知るもんですかそんなの! そのせいで私がどんなひどい目にあったと思ってるの!? この怒りをお父様は全身で受け止める義務があると思うの! 愛する娘でしょうが!」
「ひっどいわね。もしかして、あの、イルマって女の家が悪いの?」
「さあなぁ。彼女はオースティン侯爵家の娘だという話だが、そこがイーデル家に働きかけたのか、マイルズ君がイルマ嬢を気に入ったのが先なのかは分からないんだ。だがとにかく、クライスベル商会を存続させ、従業員たちを養うためには婚約を解消させるしかなかったのだよ。すまない、すまない娘よ、どうかわかってくれ……」
オーギュストは体を起こすとうつむき、涙ながらに謝罪してくる。しかし……。
――スパスパン。スパパパパパ。
セシリーはそれでも納得がいかず、父をすわった目で見つめつつ、再度無言で平手を往復させた。
「や、やめふぇくれっ! ここは誤解が解けた親子が、お互いを慰め合うのが様式美ってものだろう!?」
「知るもんですかそんなの! そのせいで私がどんなひどい目にあったと思ってるの!? この怒りをお父様は全身で受け止める義務があると思うの! 愛する娘でしょうが!」