冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
(前に来てくれた時も暗い顔をしていたし。少しでも元気づけてやりたいが……)
「――また見つかって、誰かさんに怒られても知りませんよ?」
「おわぁっ! ……ったく、ノックくらいしろキース……」

 病室にいきなり踏み込んで来たのは、副団長のキースだった。

 彼の言う通り、見舞に来たロージーにきつく言われたのは記憶に新しい。リュアンはばつの悪い思いでベッドに座り直すと、皮肉げに口元を上げているキースに向けて低い声を出す。

「もうほとんど傷はなおってるんだよ。それで、一体何の用だ?」
「これはとんだご挨拶ですねぇ。こっちは時間の取れない中、わざわざお見舞に来てあげたというのに。ああ大変だ、どこかの誰かさんが休んでなければ、こんなことにはなっていないんですがね~」
「お前っ……」

 団長不在の負担が影響しているのだと……アピールするかのように大袈裟に首を鳴らしたキースは、苛立ったリュアンに牽制するように指を突き付ける。
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