冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「……でさ、送ってくれるって言ったのに派手にひっぱたいて飛びだして来ちゃった。我ながらちょっと、あんまりだなって思ってね……」
「でもそれは、あちらの殿方が悪いのですよ~。恋人を奪われた直後の女心など、罅割れたガラス玉のようなもの……下手に触れれば割れて傷つくのは当然。私が御嬢様でも、同じようにしておりましたとも」
エイラはそんな風に優しく、セシリーの肩を揉みながら労わってくれる。すると逆に募るのが、冷静でいられなかったことへの自己嫌悪だ。あの場で感情を抑えきれなかった事実に、セシリーは自分が人として未熟なことを大いに実感させられた。
(……きっと、苺ジャム女くらい美人だったら、世の中も変わって見えるだろうなぁ)
湯に映るのは自分の、激しく『並!』と主張する、特徴のないのっぺり顔。その下だって起伏のとぼしい体つきで、自慢できるものは何もない。
ベタベタ苺ジャム女ことイルマの憎たらしい笑顔が水面に浮かんで怒りが再燃し、セシリーはそれ目掛けて顔をドボンと沈めた。そして顔を半分だけ浮き上がらせ、恥ずかしそうに言う。
「ばばばぼぼぼ、ぼぼぼぼ」
「でもそれは、あちらの殿方が悪いのですよ~。恋人を奪われた直後の女心など、罅割れたガラス玉のようなもの……下手に触れれば割れて傷つくのは当然。私が御嬢様でも、同じようにしておりましたとも」
エイラはそんな風に優しく、セシリーの肩を揉みながら労わってくれる。すると逆に募るのが、冷静でいられなかったことへの自己嫌悪だ。あの場で感情を抑えきれなかった事実に、セシリーは自分が人として未熟なことを大いに実感させられた。
(……きっと、苺ジャム女くらい美人だったら、世の中も変わって見えるだろうなぁ)
湯に映るのは自分の、激しく『並!』と主張する、特徴のないのっぺり顔。その下だって起伏のとぼしい体つきで、自慢できるものは何もない。
ベタベタ苺ジャム女ことイルマの憎たらしい笑顔が水面に浮かんで怒りが再燃し、セシリーはそれ目掛けて顔をドボンと沈めた。そして顔を半分だけ浮き上がらせ、恥ずかしそうに言う。
「ばばばぼぼぼ、ぼぼぼぼ」