冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 どんな(とが)めも甘んじて負う。そんな覚悟か静かに佇むキースに、口に出せない複雑な感情を深い息にして追い出すとリュアンはベッドから降りた。

「そのままにしてろ……よッ!」
「……ぐっ!」

 彼はキースに正対すると鍛えられた腹部を拳で軽く突き上げ、人の悪い笑みを浮かべる。

「これで手打ちにしといてやる。棒立ちのお前を殴れる機会なんて、そうないからな」
「ですが……」
「二度は言わんぞ」 

 じろりと睨み目線で制すリュアンに、この程度の処置では納得できない様子だったキースも、結局は軽く笑って流すことにしたようだ。

「ハハ……まったく、慣れないことなどやるべきではないと、こちらも骨身に沁みました。それはそうと……あなたの心の整理はついたのですか?」
「……わからない」
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