冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 目を細めて微笑んだキースに、リュアンは慌てて言い訳を返す。それを聞いて一層笑みを深くし、キースは肩を竦めた。

「ハハハ、深くは突っ込みませんが、それならなおのこと早く体を治さなければ。それにあなたが帰って来てくれなければ、私の貴重な休日が削れて順番を待つ多くの女性を泣かせてしまいますのでね」
「ちっ……そんなに休みが欲しいなら、団長命令でいつでも副団長から平団員に降格させてやるが?」
「それはご勘弁を……肩書も結構役には立つ物なので」
 
 しばしの睨み合い。

 その後ふっと力を抜くと、騎士学校時代からの同志は、久々に差し向かいで存分に笑い合う。ひとしきりそうした後、彼らは表情を切り替え、今回の件について意見を交換する。

「賊の口は割れたか?」
「いえ。一味の頭目である男をかなりきつく問い詰めましたが、彼に指示を出した人物の名前や素性は割れませんでした。ただし、ひとつおかしなことがありまして」

 リュアンが先を促すと、視線を意味ありげに光らせ、キースは告げた。
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