冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「そうですね、悪いと思ったなら早々に謝罪する。それがよろしいかと思いますよ」
「よく分かったわね!?」
「何年御嬢様のお側に付いていると思っているのです~?」

『あやまろうとおもうの』と浴槽でぶくぶく泡を立てて言ったのを、有能な侍女は当たり前のように聞き取り、思わず戦慄するセシリー。それを事も無く流すとエイラは、彼女の肩をぎゅっと握ってささやいた。

「大丈夫です。懇切丁寧に説明すれば、大抵のことは分かってもらえるものですから~。明日にでも魔法騎士団の本部に(おもむ)いて、その騎士様にお目通りを願うのがよろしいかと。僭越ですが、不安であれば私も同行させていただきますよ?」
「……ううん。今回はひとりで頑張ってみる。私、もうちょっと自分で何でもできるようにならないと。じゃないと恥ずかしいし、悔しいもん」

 セシリーは拳を握ると、決意を込めて肩越しにエイラを見つめた。すると彼女もにっこりと頷いてくれる。

「エイラは御嬢様のよいところをたくさん知っておりますよ~。輝くような派手な才能は無くとも、そうやって落ち込んでも立ち直りが早いところとか、いつも元気で素直なところとか、人様に偉ぶったりしないところとか、他にもたくさん。ですから、焦らずゆっくり頑張ってくださいませ」
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