冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~


「……はぁ。月の聖女、かぁ……」

 深夜。自室のベッドから見上げてみても、夜空を煌々と照らす丸い月は、なにも訴えかけてはくれない。


 ――結局あの後、キースの話をオーギュストは強く否定し、屋敷から追い出した。

「何の証拠があって、娘がそんな者だと言うのだ!? 言い掛かりは止めてくれ!」
「ですが……! 先日の事件でセシリー嬢が襲われた際彼女自身から、瞳が銀色に強く瞬いた後、自分が魔法の力で地下牢獄を破壊したのだという証言を受けています! 辺りに残っていた魔力も分析の結果、彼女の身体から発せられたものに間違いないと……」
「そんなものは知らん! 娘を守れなかったくせに勝手に祀り上げ、またセシリーを危険に晒そうとするなど、騎士団が聞いて呆れる! 娘にどんな力があろうが、あんたたちにどうこうされる謂れはない! 金輪際我々に近づかないでくれ……出て行け!」
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