冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 手鏡に映した、それとは似ても似つかぬ自分の地味な茶髪とグレーアイを目にし、セシリーは口をひん曲げた。

 とはいえ、彼女に大きな魔力が眠っているのはもはや間違いのない事実である。どうしてそれが今まで表に出なかったのか、なぜオーギュストがひた隠しにしようとしたのか。それらの疑問を考える内、セシリーは意識がぼんやりと霞むのを感じた。元々考えごとは苦手なのだ。

(そういえば……よく覚えてないけど、お母様は、そんな感じだった気も……す、る……)

 窓の外からの月光が、セシリーの内にある母のおぼろげな記憶を照らし出してくれるような気がして、じっと見入っている内に……意識は白い光に吸い込まれるように、その中へと溶け込んでしまった。
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