冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
今回の一件でセシリーは目を逸らしていた自分の本心に気づかされた。いつだってこんな自分には大したことなんてできないと言い訳して来たけど、本当は精一杯色々なことに挑戦し、何かを成し遂げて誰かに認めてもらいたかった。
攫われかけて、ああもうこれで自分の人生は終わりなんだ、と悟った時……心の中に湧き上がったのは強い後悔だった。あんな思いは、二度とするまい。
(何かをできるようにならなくちゃ……この先悔やんでばっかりの人生を送りたくないなら私が変わらなきゃいけないんだ。納得できる生き方をしないと、生んでくれたお母様に顔向けできないじゃない……)
セシリーは服を着換え、父から幼少期に渡された母の形見の髪留めをそっと握った。記憶はほとんど残っていなくて顔もおぼろげだけれど、自分のことをとても大事にしてくれていたのだと、父からは何度も聞かされている。
「さあ、御嬢様綺麗になりましたわ。明日に備えて今日はゆっくりしてくださいませ」
「ううん。時間は大事だし、部屋でちょっとでも勉強するわ。エイラ……私今日から頑張るからね。ただでは転ばないんだから!」
「その意気です……!」
エイラの応援を受けて力強く頷くと、セシリーは自室に戻り気持ちを新たに机に向かう。
いつか、大切な人に胸を張って自分を誇れるように。少しでもいいから何かをして返せるように。国の歴史や一般教養、実家の商売のことまで……今はなんでもいいから羽根ペン片手に頭を悩ませるのだ。こうした小さな努力の先に求めるものがあると信じて。
攫われかけて、ああもうこれで自分の人生は終わりなんだ、と悟った時……心の中に湧き上がったのは強い後悔だった。あんな思いは、二度とするまい。
(何かをできるようにならなくちゃ……この先悔やんでばっかりの人生を送りたくないなら私が変わらなきゃいけないんだ。納得できる生き方をしないと、生んでくれたお母様に顔向けできないじゃない……)
セシリーは服を着換え、父から幼少期に渡された母の形見の髪留めをそっと握った。記憶はほとんど残っていなくて顔もおぼろげだけれど、自分のことをとても大事にしてくれていたのだと、父からは何度も聞かされている。
「さあ、御嬢様綺麗になりましたわ。明日に備えて今日はゆっくりしてくださいませ」
「ううん。時間は大事だし、部屋でちょっとでも勉強するわ。エイラ……私今日から頑張るからね。ただでは転ばないんだから!」
「その意気です……!」
エイラの応援を受けて力強く頷くと、セシリーは自室に戻り気持ちを新たに机に向かう。
いつか、大切な人に胸を張って自分を誇れるように。少しでもいいから何かをして返せるように。国の歴史や一般教養、実家の商売のことまで……今はなんでもいいから羽根ペン片手に頭を悩ませるのだ。こうした小さな努力の先に求めるものがあると信じて。