冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「うん。つよくて、てきをバシッとやっつけて、おそらをビュンととぶの。それで、おうまさんみたいにあしがながくていっぱいある、かっこいいひとがいい」
どうやら今、セシリーは自分の体を動かすことができないようだ。というか、なんと不思議にもこれは、幼い頃の自分の記憶を辿っているのではないかと感じた。つまりここは、いずれ覚めてしまう夢の中なのだろう、きっと。
「お馬さんみたいな足がいっぱいな人はちょっといないかも知れないわね……。ねえあなた」
「ああ、そうだな」
その証拠が、次いで幼い自分の瞳に映った、今よりも大分若いオーギュストの姿だ。母が生きていた頃は、まだ父は小さな隊商を率いる一商人でしかなかった。御者として馬車を操る父の隣で母サラに抱かれ、セシリーはよく色んな話を聞いて退屈を紛らわせていたのだと、聞いた覚えがある。
困ったように眉を下げて笑うサラに口数少なく答えると、オーギュストはにこりともせずに鞭を振るい、馬の足を速めた。
(そっか。この頃はまだお父さんは寡黙で、笑顔なんてほとんど見せてくれなかった)
どうやら今、セシリーは自分の体を動かすことができないようだ。というか、なんと不思議にもこれは、幼い頃の自分の記憶を辿っているのではないかと感じた。つまりここは、いずれ覚めてしまう夢の中なのだろう、きっと。
「お馬さんみたいな足がいっぱいな人はちょっといないかも知れないわね……。ねえあなた」
「ああ、そうだな」
その証拠が、次いで幼い自分の瞳に映った、今よりも大分若いオーギュストの姿だ。母が生きていた頃は、まだ父は小さな隊商を率いる一商人でしかなかった。御者として馬車を操る父の隣で母サラに抱かれ、セシリーはよく色んな話を聞いて退屈を紛らわせていたのだと、聞いた覚えがある。
困ったように眉を下げて笑うサラに口数少なく答えると、オーギュストはにこりともせずに鞭を振るい、馬の足を速めた。
(そっか。この頃はまだお父さんは寡黙で、笑顔なんてほとんど見せてくれなかった)