冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
『セシリーさん、この間の言葉を覚えていますか? あなたにはぜひ、《月の聖女》の血筋を引く者として、内に眠る力――魔力を自在に操れるようになり、復活を控えた大災厄へ、我らと共に立ち向かえるようになって欲しい。特に、団長に力を貸してあげて欲しいのです」
特に団長に、というのが何かひっかかったが……セシリーは違和感をとりあえず脇へ置くと、元々感じていた不安と疑問をぶつけた。
「本当に……私なんかで務まるんですか? だって私、お伽噺の聖女様とは似ても似つかないし、小さい頃から魔法の修業とかしてきたわけじゃないですし……。他にもっと見込みのある方がいるのでは……?」
『それに関しては断言します。今現在、その可能性があるのはあなただけだと。そして無理を言いますが、躊躇している暇も無い。災厄の復活は、もう近くに迫っているのです』
「私にしか……できない」
その言葉を繰り返し、セシリーは恐れと共に胸に刻んだ。たった今背中にずしりと重たいものが乗せられた気がする。これまでとは違う、多くの人の命を左右するかもしれない選択に、指の先が冷たくなってゆく。
(いつも、皆はこんな辛い気持ちと戦っているんだ……)
特に団長に、というのが何かひっかかったが……セシリーは違和感をとりあえず脇へ置くと、元々感じていた不安と疑問をぶつけた。
「本当に……私なんかで務まるんですか? だって私、お伽噺の聖女様とは似ても似つかないし、小さい頃から魔法の修業とかしてきたわけじゃないですし……。他にもっと見込みのある方がいるのでは……?」
『それに関しては断言します。今現在、その可能性があるのはあなただけだと。そして無理を言いますが、躊躇している暇も無い。災厄の復活は、もう近くに迫っているのです』
「私にしか……できない」
その言葉を繰り返し、セシリーは恐れと共に胸に刻んだ。たった今背中にずしりと重たいものが乗せられた気がする。これまでとは違う、多くの人の命を左右するかもしれない選択に、指の先が冷たくなってゆく。
(いつも、皆はこんな辛い気持ちと戦っているんだ……)