冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 そこには、刃物に映ったあの時の瞳と同じ、ぼんやりと銀色に光る自分の双眸があった。

「……やった。きっとこれが魔法を使う、準備の段階なんだ……」

 両手を広げて見下ろした自分の身体も、今は薄ぼんやりとした靄のような光に包まれている。それは力を抜くと、すっと体の奥へと引っ込んでしまい、セシリーはどっと疲れてベッドに倒れ込んだ。

(これ、凄い疲れる……。皆いつも、こんなことやってるの?)

 今更ながら魔法使いの偉大さに頭が下がる気持ちになりながら、でもセシリーはわずかばかりの手ごたえを感じ、手を突き上げると再度体を起こす。

「頑張ろう……体に覚えさせるんだ」

 毎日必死に訓練をこなす魔法騎士たちを見習おうとセシリーは顔を上げ、何度同じことを練習する。今もきっとそれぞれのすべきことを懸命にこなしている騎士団の皆を思うと、自然とセシリーの気持ちは前に向かい、地道な努力も苦にはならなかった。
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