冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「……うう、ぴくりとも動きませんよ」
『ははは、心配ありません。この修行には、魔力を感じ取るより多くの時間がかかるのが通例ですから。先の段階をかなり短縮できたので、焦る必要もないでしょう。地道にやって下さい』
「わかりました。頑張ります」

 そのままスムーズにいかずに少しはがくりときたものの、そもそもこれが普通なのだ。セシリーはクライスベル家の一人娘として、商売に関する知識を覚えさせられた時のことを思いだす。触れる機会が多いものから自然と身に付いていたし、毎日意識的にやっていればきっと何かしらの変化は出てくるはず……今はそれを信じてやるのみだ。

『近々行われる節刻みの舞踏会に出席することができれば、そこで太陽の聖女……フレア・マールシルト様と会う機会もあるでしょうから、彼女に色々聞いてみるのもよいかもしれませんね』

 水面を見つめ、洗顔とか魔力でできるようにならないかな、などと横着を考えていたセシリーはうっ、と顔を曇らせた。太陽の聖女――彼女のせいではないので大変申し訳ないのだが、その呼び名を聞くと苦い思い出とマイルズたちの顔が浮かんで、どうしても肩が重い。

「あはは……王太子と婚約された方ですよね。ち、ちなみに……具体的に封印はどういった形で行われるんでしょうか」
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