冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
『申し訳ありません、それに関しては私もよく存じていなくてね。特殊な封印の儀式が執り行われるのだと耳にしたことは有るんですが……おそらく王家の方からその折に御説明があるはずです』
「おおお!? 王様と会うんですか!? 私……私……」
『大丈夫、その時はおそらく団長も傍にいることになるでしょうから、彼がしっかりエスコートしてくれますよ』
(なんで団長が……?)

 セシリーは首を傾げたが、キースが急用で一旦外に出ると告げたため、その日の魔法講習はお開きになる。セシリーはキースにしばらくの間、時間が欲しいと伝え、彼はそれを了承して通信を切った。

(お父様と、ちゃんと話し合わないと……)

 真正面から父オーギュストに、自分の気持ちをはっきりと伝え、魔法騎士団の力になることを許して貰わなければならない。それには多分どうしてこんなにも父が過剰にセシリーのことを守ろうとするのかを、ちゃんと知らなければならない。

 父が自分を思いやって、ああしてキースに厳しい言葉を吐いたことはわかっている。けれど、あくまで自分の進む道を決めるのは、セシリー自身でなければならない。それが分かってくれるまで、何度跳ね除けられても、言葉を尽くして理解して貰わなければ。

 エイラには父が帰ってくれば知らせてくれるように頼んである。それまでは……とセシリーは冷たい水に手を浸し、変化の起こらない水面をひたすら注視し続けた。
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