冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
キースからの言葉に疲れたように呟くリュアン。そんな彼の手元に「どうぞ」静かにティーカップが置かれた。
この執務室で茶を淹れるのはキースの役割だ。趣味のひとつだと周囲にも喧伝する通り、彼の出してくれる茶は抜群に美味い。丁度飲みやすい温度のそれでリュアンは喉を潤すと、一旦気持ちを落ち着ける。
「封印はどれくらい持ちそうなのです?」
「恐らく後数年は持つのではないかと言われているが、それはつまり裏を返せば――」
「異常事態が起きればいつ壊れてもおかしくはない、ということですか。それはそれは……早めにどうにかしないといけませんね」
ふたりが話しているのは、今から五百年近く前……このファーリスデル王国と隣のガレイタム王国の中間の地から湧きだした《大災厄》を封じたとされる古い封印のこと。近年までそれは順調に機能していたが、ここにきて力が弱まり始め、その影響か各地に発生する魔物も増加の一途をたどっている。
それらに日々対応するのが、この魔法騎士団の役目であり、リュアンはその第十二代目団長として日々激務に追われている。つい数時間前セシリーに当たるようなことを言ってしまったのも、彼の若さからくる未熟さだけが原因ではなく、重責に追われての余裕のなさも大きく関係していた。
この執務室で茶を淹れるのはキースの役割だ。趣味のひとつだと周囲にも喧伝する通り、彼の出してくれる茶は抜群に美味い。丁度飲みやすい温度のそれでリュアンは喉を潤すと、一旦気持ちを落ち着ける。
「封印はどれくらい持ちそうなのです?」
「恐らく後数年は持つのではないかと言われているが、それはつまり裏を返せば――」
「異常事態が起きればいつ壊れてもおかしくはない、ということですか。それはそれは……早めにどうにかしないといけませんね」
ふたりが話しているのは、今から五百年近く前……このファーリスデル王国と隣のガレイタム王国の中間の地から湧きだした《大災厄》を封じたとされる古い封印のこと。近年までそれは順調に機能していたが、ここにきて力が弱まり始め、その影響か各地に発生する魔物も増加の一途をたどっている。
それらに日々対応するのが、この魔法騎士団の役目であり、リュアンはその第十二代目団長として日々激務に追われている。つい数時間前セシリーに当たるようなことを言ってしまったのも、彼の若さからくる未熟さだけが原因ではなく、重責に追われての余裕のなさも大きく関係していた。