冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

隣国への墓参り②

 母サラの墓はセシリーの生まれ故郷ではなく、オーギュストとサラが出会った村の近くの墓地にあるという。ふたりの馬車は旅の途中から同行させてもらった隊商の隊列から離れると、細い脇道を進みやがてのどかな農村にたどり着いた。

 一泊の後宿に馬車を預け、セシリーはオーギュストに連れられて母の墓標へと向かう。着くまでの間セシリーはオーギュストにサラの話をたくさんせがみ、そんな彼女を守るかのようにリルルはぴったりと寄り添っていた。

 オーギュストの話によると……実は元は彼はグスタフ、妻サラはリーシャという別名を持っていたのだという。

 そしてサラ――リーシャの生家、レフィーニ侯爵家はガレイタム王国でも永い歴史を持つ名家のひとつで、多くの優秀な魔法使いを輩出してきた家柄でもあった。


 ――かつて月の聖女と謳われ、ガレイタム国王と結ばれた修道女には男児と女児がひとりずつ生まれた。もちろん男児は王位を継ぐとして……女児は血筋に流れる魔力を保つため、当時の国王から最も信頼されていた配下だったレフィーニ侯爵の息子へと嫁がされる。それ以降、代々その家に生まれた女児は月の聖女の候補として育てられ、代を重ねるうちに血筋の断絶を防ごうと幾つかの名家も声を上げ、レフィーニ家の聖女の血は他のいくつかの貴族家にも受け継がれることとなっていった。
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