冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
やや傾斜のきつい山道で息を荒げることなく、新緑の網をオーギュストは潜り抜けていく。そんな父の姿はセシリーにとっていつだって頼もしかった。
「私の中のお父様は……娘に大甘でちょっぴり情けなくて、でも今は大勢の人の仕事を作り、居場所を与えて、尊敬されてる。誰にだって胸を張って自慢できる素敵な家族だわ。……それで、合ってる?」
「ありがとう、セシリー。お前も、ちょっと手が早いところはあるし、お淑やかではないけれど、私にとっては目に入れても痛くないくらい、かけがえのない大切な娘なんだ。それを忘れないでくれ」
「ウォン!」
「おや、こいつ……私の言っていることが分かるのか? はは、中々見どころがある犬じゃないか」
オーギュストはセシリーに優しい笑みを見せた後、すり寄ってきたリルルの頭を撫でまわす。父は母がいなくなってからずっとひとり、誰にも辛い胸の内を明かさずセシリーを守ってくれた。母が傍にいない分、これからも父の一番の理解者であってあげたい。
そう願ったセシリーの視界は、あるところに差し掛かり大きく開けた。いつのまにか坂道を登り終え、眼下に大地を見下ろす崖のような部分に出ていたのだ。
「私の中のお父様は……娘に大甘でちょっぴり情けなくて、でも今は大勢の人の仕事を作り、居場所を与えて、尊敬されてる。誰にだって胸を張って自慢できる素敵な家族だわ。……それで、合ってる?」
「ありがとう、セシリー。お前も、ちょっと手が早いところはあるし、お淑やかではないけれど、私にとっては目に入れても痛くないくらい、かけがえのない大切な娘なんだ。それを忘れないでくれ」
「ウォン!」
「おや、こいつ……私の言っていることが分かるのか? はは、中々見どころがある犬じゃないか」
オーギュストはセシリーに優しい笑みを見せた後、すり寄ってきたリルルの頭を撫でまわす。父は母がいなくなってからずっとひとり、誰にも辛い胸の内を明かさずセシリーを守ってくれた。母が傍にいない分、これからも父の一番の理解者であってあげたい。
そう願ったセシリーの視界は、あるところに差し掛かり大きく開けた。いつのまにか坂道を登り終え、眼下に大地を見下ろす崖のような部分に出ていたのだ。