冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「ならば、もし私が倒されるようなことがあれば抵抗せず、レフィーニ家の血を引くものだと伝えるのだ。そうすれば相手も、命を奪う真似まではしないだろう」
オーギュストがセシリーを背中に庇い、油断なく林の奥を見据えていると……奥から十人以上の人間が姿を現し、ふたりと一匹を囲む。揃いの隊服を着た彼らはおそらく兵士で、胸元には光るのは、間違いなくガレイタム王国の紋章だ。
相手を刺激しないように浮かべた笑顔で、オーギュストは軽い芝居を打つ。
「おやおや、物々しい装いですなぁ。私たちは隣の国から旅をしてきた観光客で、少し景色を楽しんでいただけなのですが、何か御用がおありでしょうか? お邪魔になってもいけませんし、何もないようでしたら、我々はすぐにこの場所をお暇させていただきますよ」
「動くな」
頭をぺこぺこ下げながら、セシリーたちを連れ、兵士たちの囲いを抜けようとしたオーギュストだが、それは最後尾から姿を現した男の言葉によって制止された。まだ若い、それこそリュアンやキースと同年代か少し上ほどの、黒髪黒目をした男性。鋭い面差しは、不思議と誰かに似ている気がする……。
オーギュストがセシリーを背中に庇い、油断なく林の奥を見据えていると……奥から十人以上の人間が姿を現し、ふたりと一匹を囲む。揃いの隊服を着た彼らはおそらく兵士で、胸元には光るのは、間違いなくガレイタム王国の紋章だ。
相手を刺激しないように浮かべた笑顔で、オーギュストは軽い芝居を打つ。
「おやおや、物々しい装いですなぁ。私たちは隣の国から旅をしてきた観光客で、少し景色を楽しんでいただけなのですが、何か御用がおありでしょうか? お邪魔になってもいけませんし、何もないようでしたら、我々はすぐにこの場所をお暇させていただきますよ」
「動くな」
頭をぺこぺこ下げながら、セシリーたちを連れ、兵士たちの囲いを抜けようとしたオーギュストだが、それは最後尾から姿を現した男の言葉によって制止された。まだ若い、それこそリュアンやキースと同年代か少し上ほどの、黒髪黒目をした男性。鋭い面差しは、不思議と誰かに似ている気がする……。