冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
ラケルはそっと扉を開けた。隙間からは……キースとリュアン、エイラの三人が深刻な表情で話し合っているのが見える……。
「――セシリーさんの母君のご供養だということでしたね……。目的地はここです、ガレイタム王国の南東部にある、フィエルという小さな村。エイラさんのおっしゃる通り……なにかトラブルにでも見舞われていなければ、こうまで時間が掛かるのはおかしいか……」
発つ前に話を聞いていたのか、キースは隣国の地図を取り出すと場所を確認し始め、リュアンもそれを覗き込む。そして同様の判断を下したのか、彼は地図をじっと睨んだ後すぐに、衣類掛けに吊るしたマントを羽織り背を向けた。
「……俺が行く」
「待ちなさい! そう何度も、騎士団の長であるあなたが出張ってどうするのです! 心配なのは分かりましたから、団内でも選りすぐりの腕利きを派遣します。それでも不安なら私が直接行きましょう。どうか我慢して下さい……」
「駄目だ……!」
キースは額を押さえながらリュアンを説き伏せようとしたが、彼はぐっと口の端を噛み締めて振り向く。
「――セシリーさんの母君のご供養だということでしたね……。目的地はここです、ガレイタム王国の南東部にある、フィエルという小さな村。エイラさんのおっしゃる通り……なにかトラブルにでも見舞われていなければ、こうまで時間が掛かるのはおかしいか……」
発つ前に話を聞いていたのか、キースは隣国の地図を取り出すと場所を確認し始め、リュアンもそれを覗き込む。そして同様の判断を下したのか、彼は地図をじっと睨んだ後すぐに、衣類掛けに吊るしたマントを羽織り背を向けた。
「……俺が行く」
「待ちなさい! そう何度も、騎士団の長であるあなたが出張ってどうするのです! 心配なのは分かりましたから、団内でも選りすぐりの腕利きを派遣します。それでも不安なら私が直接行きましょう。どうか我慢して下さい……」
「駄目だ……!」
キースは額を押さえながらリュアンを説き伏せようとしたが、彼はぐっと口の端を噛み締めて振り向く。