冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 リュアンは、はっと気づいたように胸を押さえると、キースに真摯に頭を下げる。

「頼む、今回だけは行かせてくれ……! そのためなら騎士団を……除籍処分にしてくれても構わない!」
(団長が、こうまでして人のために頭を下げるなんて……。そんなにも、セシリーのことを心配して……?)

 滅多に見ないリュアンの取り乱した姿を陰から覗いていたラケルは衝撃を受けた。じっと厳しい目で見つめていたキースもそれには静かに嘆息し、手のひらを上にして降参する。

「やれやれ……これ以上忙しくなってしまうと、こちらの方がどうにかなってしまいそうなんですがね。あなたに彼女と仲良くするよう炊きつけたのは私ですから仕方ないですか……。あなたが不在の間、責任を取ってどうにかして回して見せますから……行って来なさい」
「本当か!」
「ただし、ひとつ約束です。行ったきりは無しで、必ずふたり揃ってまたこの場所へと戻ってくること。大災厄が無事封印されたしても、この先も未来は続いていくんですからね。あなたにはここの団長として、その平和を守る義務がある。そうでしょう?」
「……ああ! 必ず戻ると約束する……。それじゃ、行ってくる!」
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