冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「お願いします……連れて行ってください、団長!」 

 ラケルは断わられても無理にでも着いていくつもりでいた。そしてリュアンも自分がキースに無理を言っておいて他人を咎めることはできなかったのか、断らずに頷いた。

「急ごう。着いて来られないようなら置いて行く」
「はい!」

 そこへエイラが走り寄って来て、気が気ではない表情でふたりに懸命に頼み込む。

「おふたりとも、どうかお願いします……! 御館様は、かつて身寄りのなくなった私をクライスベル家の使用人として受け入れて下さった恩人で、そして御嬢様も私にとっては……年の離れた妹のような存在なのです。ですから、どうか……ううっ!」
「大丈夫ですか!? 心労が溜まっているのでしょう……」

 エイラの顔色はひどく優れず、胸を押さえ辛そうにしていた。しかしキースに支えられながらも、彼女はリュアンに懸命に頭を下げる。
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