冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「――ラケル」
「……すみません」

 ……今度はラケルの方がリュアンを引き離しそうになり、慌てて速度を緩める。
 彼らは並走しながら強い焦りを滲ませ、言葉を交わした。

「団長は……ふたりがどうなっているか、心当たりがあるんですか?」
「今は……まだ言えない」
「何故なんですか、教えてくださいよ! 団長のことを。キース先輩は知ってるんでしょう!? 今はまだ、頼りないかもしれないけれど、僕だって同じ騎士団の仲間じゃないですか!」

 リュアンがこんな時にまで隠し事を続けるのは、それだけの理由が裏にある。そういうことだとは分かっていても、ラケルはもっと自分たちを信頼して欲しかった。

 しかしリュアンは首を縦に振ろうとはしない。
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