冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
黙って少し後ろに付いて歩こうとしたのに、彼は自分から速度を下げて隣に並ぶ。セシリーが人々の視線から彼を盾にしようとしているのを気づいたのだろう。
「はっはっ、せいぜい目立つがいい。そのために町で着替えさせて来たのだからな」
(嫌味な人……)
彼は一旦登城前にセシリーを、ファーリスデルですら名前を聞くことのある最高級服飾店に連れて行き、そこで彼女が来ていた長旅用の簡素な普段着から恐ろしく手の込んだ縫製のパーティードレスへと着替えさせた。ところどころで白銀色の薄いレース生地が重ねられ、薄紫の下地が花のような形で浮かび上がって見えている。
それに合うアクセサリも見繕ってくれて、ジェラルドが満足したところを見た店員はそのままお帰りになって結構ですとふたりを送り出した。おそらく後で王宮にまとめて請求するのだろうが……目の飛び出るような大金が納められるのは間違いない。金額を聞かなくてよかったと彼女は胸を撫で下ろしたものだった。
もちろんジェラルド自身も、丈の長い濃紺のコートとスラックスの上から金刺繍の入ったマントを羽織り、威風堂々とした王侯の貫禄を周囲に見せつけている。
「はっはっ、せいぜい目立つがいい。そのために町で着替えさせて来たのだからな」
(嫌味な人……)
彼は一旦登城前にセシリーを、ファーリスデルですら名前を聞くことのある最高級服飾店に連れて行き、そこで彼女が来ていた長旅用の簡素な普段着から恐ろしく手の込んだ縫製のパーティードレスへと着替えさせた。ところどころで白銀色の薄いレース生地が重ねられ、薄紫の下地が花のような形で浮かび上がって見えている。
それに合うアクセサリも見繕ってくれて、ジェラルドが満足したところを見た店員はそのままお帰りになって結構ですとふたりを送り出した。おそらく後で王宮にまとめて請求するのだろうが……目の飛び出るような大金が納められるのは間違いない。金額を聞かなくてよかったと彼女は胸を撫で下ろしたものだった。
もちろんジェラルド自身も、丈の長い濃紺のコートとスラックスの上から金刺繍の入ったマントを羽織り、威風堂々とした王侯の貫禄を周囲に見せつけている。