冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「オレの隣に立つにはいささか地味だが、たまにはこういう変わり種も悪くない」
(変わり種で悪かったわね……)

 そうは思うが、ある意味それでもセシリーには過分すぎる評価ではあった。なにせ、自分はただの成金伯爵の娘でしかない。本来こんなところにいていい身分ではないはずなのだ。

 外門から続く中央通路は巨人でも通れそうな天井の高さで、支える大理石の柱はセシリーが三人で手を繋いで輪を作っても囲めるかどうかという太さ。そんなものが両脇から延々と奥まで続く。

 一体どこまで歩いてゆくのだろう……目的地はどこなのか?
 何もかもがわからず不安に思うセシリーに、ジェラルドは優しくささやく。
 
「お前はオレの隣に黙って(かしづ)いているだけでよい。謁見など終わってみればあっという間だ」
「は、はい。……はい?」
 
 ついその甘く深い声に胸を激しく騒がせながらも、セシリーは聞き捨てならぬ言葉に反応した。
< 388 / 799 >

この作品をシェア

pagetop