冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「謁見……? 今、謁見って言いましたよね。謁見って、そのう……どなたに?」
「どなたもこなたもあるものか。ひとりしかおらぬだろ……国の最高権力者である国王は」
「こっここ、こここくおう……さまぁ!?」

 ついずるっとその場に膝が折れそうになったセシリーを、ジェラルドが支えてくれる。

「しっかりせぬか。せっかく見繕った服が台無しだろうが。職人が泣くぞ」
「すす、すみません。でも……私無理です!」

 慌てて身をひるがえそうとしたセシリーの腕をさっと取るジェラルド。

「たわけが……ここへ来た以上そなたに選択権などない。黙ってオレの後に着いてこい!」
(やだぁぁぁぁぁぁあ、怖いよぉぉぉぉ!!)

 セシリーはやや苛ついた表情のジェラルドに捕獲され、ずるずると引きずられるように腕を引かれて謁見の間の大扉に近づいてゆく。 「ジェラルド様、よいのですか? そのような小娘をお入れしても。なにやら妙に取り乱しておりますが……」
「そう言ってやるな、これでもこいつは……」

 番兵たちがセシリーの奇矯な行動に首を傾げたが、ジェラルドがぼそりと耳元で呟くと、途端彼らはしゃっきりと背を伸ばし頭を下げる。
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