冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「こ、小娘などと大変失礼致しましたっ! では、開門します!」
(ああぁぁぁぁぁ……)
 
 地獄の釜が開くような思いで、セシリーは門の開閉を見つめる。

「そら行くぞ」

 しかしせっかちなジェラルドはそれが開き切るのを待ってくれず、光がもれる隙間に体を滑り込ませセシリーの手を引く。

(嫌ぁぁぁ、心の準備がぁぁ! あぁ……誰か助けて)

 もちろんセシリーのそんな心の声など誰も聞いてくれない。
 そして、通路に向かって手を伸ばすセシリーの目の前で、無慈悲な番兵たちが重たい音を立てながら、しっかりと扉を閉じてしまった。
< 390 / 799 >

この作品をシェア

pagetop