冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「違います……。あなた、記憶は確か? ジェラルド様から頭は打っていないはずだと聞いていたけれど……ここかどこかわかる?」
「クライスベル家のお屋敷……ではない?」
セシリーは周囲を大きく見渡し、ようやくそのことを認識する。壁紙から絨毯、そして今自分の座しているこの天蓋付きのベッドからシーツの一枚に至るまで、おそらく全て職人が手ずから造り上げた一級品だ。こんなものがたかが成金貴族であるクライスベル家の屋敷に有るわけがなかった。
「どこですかここ?」
「本当に頭がおかしくなってしまったのかしら? 私も詳しくは存じ上げていないけれど、あなたジェラルド様にこの王宮へと連れてこられたのでしょう? 隣国のファーリスデル王国から」
「ああ!」
彼女の言葉にじんわりと記憶が刺激され、数日前に王国を発った事、母の墓へと訪れたことやガレイタム王国軍に拘束されたこと、そしてジェラルドに事実を聞かされ、この場所まで引っ張られてきたことが数珠つなぎに思い出された。
そして、つい何時間前かに起きた衝撃の出来事も。
「クライスベル家のお屋敷……ではない?」
セシリーは周囲を大きく見渡し、ようやくそのことを認識する。壁紙から絨毯、そして今自分の座しているこの天蓋付きのベッドからシーツの一枚に至るまで、おそらく全て職人が手ずから造り上げた一級品だ。こんなものがたかが成金貴族であるクライスベル家の屋敷に有るわけがなかった。
「どこですかここ?」
「本当に頭がおかしくなってしまったのかしら? 私も詳しくは存じ上げていないけれど、あなたジェラルド様にこの王宮へと連れてこられたのでしょう? 隣国のファーリスデル王国から」
「ああ!」
彼女の言葉にじんわりと記憶が刺激され、数日前に王国を発った事、母の墓へと訪れたことやガレイタム王国軍に拘束されたこと、そしてジェラルドに事実を聞かされ、この場所まで引っ張られてきたことが数珠つなぎに思い出された。
そして、つい何時間前かに起きた衝撃の出来事も。