冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「呆れた子。王妃候補たるもの、自制心を失くしては務まらないわよ。マーシャもせめて、身なりを整えさせてから呼びなさいな」
「いいじゃないですか。よっぽどお腹が空いてたんですよ。ねぇ?」
「ふぁい。美味しいれす」

 はぐはぐとマフィンを幸せそうに頬張るセシリーを撫でながら、マフィン娘は名乗ってくれた。

「あたしはマーシャ・レード。あなたと同じ伯爵家の娘ですよ……セシリーさん、これからよろしくお願いします。よかったら隣の国のこと、色々教えてくださいね?」
(はい、頑張ります……!)

 セシリーがふかふかのマフィンを口いっぱいに頬張ったせいで返事もできず、ぶんぶんと首を縦に振るのを、彼女はとても嬉しそうに見つめた。
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