冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~


 それから、心ゆくまで菓子を貪り一息ついたセシリーは、マーシャに髪を梳かして貰いながらふたりの話を聞いていた。レミュールの年は二十四、マーシャは十九と、今年十八になるセシリーとは少し離れているようだ。

「では、レミュール様と、マーシャ様はもう十年近くもこちらにいらっしゃるのですか?」
「ええ。私たちがここを初めて訪れた時には、もっとたくさんの娘たちがいたの。ここは王妃候補としての教育の場というだけではなく、聖女としての修業の場も兼ねていた。しかし、今までひとりを除いて誰も資格を示せず、少しずつ家へと戻されて行ったわ。今となっては形だけのそんな場所……」

 今まで資格を示したのはひとりだけ……ということはレミュールかマーシャがそれに当たるのだろうか。しかし彼女たちはそれについてはっきりとは述べず、儚い笑みで口元を彩る。

「ま、色々あったんですのよ。女同士の醜い争いも……それを下らないと撥ねつけ、育まれたささやかな友情も。けれど結局はすべて実りはしなかったわね。最後には誰も、国から認められジェラルド様と番になることはできなかった」

 レミュールは立ち上がると、ベッドに手を伸ばし、何かを持ち出してきた。
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