冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「そうだな。お前も当事者だ……どうしてこのような経緯に至ったのか聞く資格は十分に有るだろう。かつて……月の聖女あることを、お前と同じように証してみせたひとりの少女がいた。しかし――」

 ジェラルドは、両手の上に乗せた顔を俯かせる様にして視線を隠すと、静かな声で告げた。

「彼女は……(よわい)十五という若い年にして亡くなったのだ。それが今から十年ほど前、あの離宮が作られた、次の年だった」



 ジェラルドはそこから、自らの生い立ちも含め、彼らに起きた出来事を時系列に並べ語ってくれた。



 ――月の聖女に守られし我が国と、太陽の聖女に守られしファーリスデル王国。両国の関係は五百年の長きにも渡り続いてきた。両国がこれほどまでに固く友好を守り続けることができたのは、皮肉にも遠き未来に……封印が破られることが、確定していたからだ。
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