冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
その要因となった悪王リズバーンの脅威は、それほどまでにふたつの国を戦慄させていた。もう遠い昔のことであまり記録は残されていないが、一説には、この国の総面積の半分程度が、数日で草も生えぬ不毛の土地へと姿を変えたということだし、名残として今もあの砂丘が残っている。それだけで影響は推し量ることができよう……。
長く平和は保たれた方だろう……しかし万物は永遠たり得ぬものだ。着々と、《大災厄》の復活が迫るそんな時代にオレはこの国、ガレイタム王国の王太子――第一王子として命を授かった。
幼き頃から父はオレに、厳しく体を鍛えさせた。その理由は言わずもがな、災厄の復活の折に《月の聖女》の隣に立ち、彼女の守り役として剣を振るうためだ。聖女は大きな力を扱う際、祈りにより無防備な姿を曝け出す……それを護衛するため、偉大な祖先の後継として、務めを果たせ――父の言いつけに従い、オレは物心ついた頃から鉄剣を握らされ、兵と共に鍛錬に勤しんだ。
おそらくお前は知らぬだろうが……そんな幼いオレを一時期鍛えてくれたのが、オーギュストだったのよ。といっても一年か二年と言った短い期間だったがな。ちなみにその頃、お前の母君も宮廷魔術師として王宮で働いていたのが……ついにふたりが顔を合わすことはなかったようだな。容姿ならず心も、真に美しい女性であった。
長く平和は保たれた方だろう……しかし万物は永遠たり得ぬものだ。着々と、《大災厄》の復活が迫るそんな時代にオレはこの国、ガレイタム王国の王太子――第一王子として命を授かった。
幼き頃から父はオレに、厳しく体を鍛えさせた。その理由は言わずもがな、災厄の復活の折に《月の聖女》の隣に立ち、彼女の守り役として剣を振るうためだ。聖女は大きな力を扱う際、祈りにより無防備な姿を曝け出す……それを護衛するため、偉大な祖先の後継として、務めを果たせ――父の言いつけに従い、オレは物心ついた頃から鉄剣を握らされ、兵と共に鍛錬に勤しんだ。
おそらくお前は知らぬだろうが……そんな幼いオレを一時期鍛えてくれたのが、オーギュストだったのよ。といっても一年か二年と言った短い期間だったがな。ちなみにその頃、お前の母君も宮廷魔術師として王宮で働いていたのが……ついにふたりが顔を合わすことはなかったようだな。容姿ならず心も、真に美しい女性であった。