冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
きっと当時は、多くの少女たちがここで学び、言葉や心を交わしていたのだろう……。セシリーはその年月を思いやるように、目の前のテーブルに刻まれた小さな傷にそっと手を触れた。
「だがな……思った以上に聖女としての血が薄められていたのか、それとも偶然か。適正な資格を示したのは、当時その中のひとりだけだった。お前も聞いたかもしれんが……ラナという少女がそうだった」
愛おしさと寂しさを宿らせた瞳は、彼が面を上げ扉の方をちらりと見ると同時に平常へと戻っていた。微かな足音がする……ふたりがこちらに向かっているのだろう。
「今日はここまでにしておくか……」
「は、はぁ……」
ジェラルドは気配を緩め、もう話すつもりもないようだ。一番核心となる部分を前に気勢を削がれ、セシリーは残念な顔をしながらも、レミュールとマーシャが入って来るのを待った。
「失礼しますね、ささどうぞ……。甘い物もありますよ」
「ちょうど喉が渇いたところであった。いただこうセシリー」
「はい」
「何の話をしていましたの?」
ちょっとした昔話だとジェラルドはレミュールに答え、彼女は少し顔を曇らせた。相変わらず笑顔で隣に座ったマーシャと何故か少し温度差が有るのを疑問に感じつつも、セシリーは彼らの談笑に加わり、楽しい一時を過ごした。
「だがな……思った以上に聖女としての血が薄められていたのか、それとも偶然か。適正な資格を示したのは、当時その中のひとりだけだった。お前も聞いたかもしれんが……ラナという少女がそうだった」
愛おしさと寂しさを宿らせた瞳は、彼が面を上げ扉の方をちらりと見ると同時に平常へと戻っていた。微かな足音がする……ふたりがこちらに向かっているのだろう。
「今日はここまでにしておくか……」
「は、はぁ……」
ジェラルドは気配を緩め、もう話すつもりもないようだ。一番核心となる部分を前に気勢を削がれ、セシリーは残念な顔をしながらも、レミュールとマーシャが入って来るのを待った。
「失礼しますね、ささどうぞ……。甘い物もありますよ」
「ちょうど喉が渇いたところであった。いただこうセシリー」
「はい」
「何の話をしていましたの?」
ちょっとした昔話だとジェラルドはレミュールに答え、彼女は少し顔を曇らせた。相変わらず笑顔で隣に座ったマーシャと何故か少し温度差が有るのを疑問に感じつつも、セシリーは彼らの談笑に加わり、楽しい一時を過ごした。