冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 王城にはさすがに敵わないだろうが、クライスベル家の数倍はありそうないくつもの建物を中心とした正方形の敷地は、とにかく広大と言うに尽きた。元々は王城の敷地内に隊舎が有ったらしいのだが、王国の発展にしたがい次第に城内が手狭になったため、近年新設されたのだということだった。

 今さらながらセシリーは顔を赤くすると肩をすぼめ、道の端を歩いていく。さすが騎士団、行きかう人々は誰も彼もが自信に満ち満ちて、びしっと白い制服を着こなした姿は滅茶苦茶格好いい。

(なんか緊張するぅ~……)

 平凡な自分が逆に悪目立ちしているような気分になり、思わずうつむいてぎこちなく歩くセシリー。しかし、彼女はもっと周囲に気を配るべきだった。

 突然視野外からどーんとぶつかってきた何かに突き飛ばされ、彼女は横合いの茂みの中に大きく倒れ込む。
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