冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
(それで、この大地は滅びるかも知れないし、もしかしたらそうはならないかも知れない。どちらにしても……特別な誰かが大きな力を持っていたからといって、誰かのためにそれを振るわなくてはならないと私は思わない。あなたのしたいようになさるべきです)
(私のしたいように……でいいんですか?)
(ええ。自分に恥じるところが無ければ、誰が何を言われようと構わないはずです。あなたはあなたが望むことのために生きて死になさい。誰にもそれを咎める権利など、私はないと思います)

 自分が望むこと……それについては答えがもう出ていると、セシリーは思っている。未だ迷いはあるが、それはセシリーが自分自身の心の中で答えを出さないといけないことだ。

(はい……女神さまももう少し時間はあるっていってたし、ちゃんと考えてみます)
(もし、どこにも行き場が無くなったなら、この森においでなさい。どうせこの地が滅ぶなら、皆で一緒にそれを眺めるのも一興です)
(ありがとう……)

 大狼は温かい顔をそっと触れさせ、大きな体でセシリーを我が子のように包んでくれた。しばし抱擁を交わした後、セシリーは彼女の上に跨る。
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