冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
レミュールはきっちりとした性格で少しきついところもあるが、その実誰かが困っているのを見過ごせないような人格者だ。侍女たちにも頼りにされており、いつもこの時間帯になると館内を見回って異常がないか確かめてくれているらしい。セシリーのことも何くれと気に掛けてくれて、その姿は頼りになるお姉様といった風情があり、なんとなく向こうにいるエイラのことを思い浮かばせた。
そして一方マーシャと言えば性格はとても穏やかで優しく、レミュールほどの華やかさはないけれど、野の花が咲いた様なような、人を自然と温かい気持ちにさせる笑顔や雰囲気が魅力的だ。彼女は伯爵令嬢にあるまじくお菓子作りが大好きだそうで……実家の料理長や侍女たちに頼み込んで教わったという努力の結晶を、ここではいかんなく発揮している様子。セシリーはこのまま彼女の傍にいると餌付けされて次第にふっくらしそうなのを恐れている。
しかしそんな彼女は、時折ひとりでぼんやりと考え込んでいるとことがあった。ジェラルドとそう頻繁に会えないことに胸を痛めているのかとも思ったが……何となく違う気がする。それはまるで何か大事な物をどこかに置き去りにしてしまったかのような切ない表情だった。
レミュールもそれを見て、辛そうに視線を落としていることがあった。もし先日のジェラルドとの会話を最後まで聞いていれば何かわかったのかも知れないが……先日来たばかりのセシリーが軽々しく立ち入ってはいけないことのように感じて、簡単には聞けそうにない。
そして一方マーシャと言えば性格はとても穏やかで優しく、レミュールほどの華やかさはないけれど、野の花が咲いた様なような、人を自然と温かい気持ちにさせる笑顔や雰囲気が魅力的だ。彼女は伯爵令嬢にあるまじくお菓子作りが大好きだそうで……実家の料理長や侍女たちに頼み込んで教わったという努力の結晶を、ここではいかんなく発揮している様子。セシリーはこのまま彼女の傍にいると餌付けされて次第にふっくらしそうなのを恐れている。
しかしそんな彼女は、時折ひとりでぼんやりと考え込んでいるとことがあった。ジェラルドとそう頻繁に会えないことに胸を痛めているのかとも思ったが……何となく違う気がする。それはまるで何か大事な物をどこかに置き去りにしてしまったかのような切ない表情だった。
レミュールもそれを見て、辛そうに視線を落としていることがあった。もし先日のジェラルドとの会話を最後まで聞いていれば何かわかったのかも知れないが……先日来たばかりのセシリーが軽々しく立ち入ってはいけないことのように感じて、簡単には聞けそうにない。