冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「どうぞ、そこに掛けてくれる?」

 訪れた彼女の――恐ろしく整頓された淑女の私室に少しドキドキしながら入ると、セシリーはテーブルの前の小さな椅子に座らされた。机上に置かれた小蠟燭が煙をたなびかせ、心を鎮めるいい香りをもたらしてくれる。

 レミュールは自分も小さなスツールに腰を落ち着け、姿勢を正してセシリーに話しかけた。

「すまないわね、こんな夜更けに。実はさっきのは半分嘘なの。パレードがあるらしいのは聞いたけれど、ジェラルド様には何も頼まれていないわ。マーシャ抜きで話がしたくて呼んだだけなの……」
「そうなんですか? 私は……全然構いませんけど、なんでしょう」

 首を傾げるセシリーにレミュールは、今も迷っている様子だったが、少しずつ口を動かし始める。

「ジェラルド様から……ラナという人について聞いたかしら?」
「……この離宮で、たったひとり聖女としての資格を示した人だったって。この間は、丁度その辺りで話は終わってしまって。あの……勘違いでなければ、亡くなられたって言っていたような」
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