冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
どういうことなのか、セシリーが問うまでも無く、レミュールはその理由を告げる。
「マーシャは……おかしくなってしまったの。ある事件がきっかけで……私たちと過ごした三年間のことを全て忘れてしまった。そしてラナはその時に死んでしまったから……マーシャは覚えていないのよ。自分の本当の年齢も、ラナがいたことも……自分がしてしまったことも」
静かな夜、薄明かりが照らす部屋の中で……レミュールは古い記憶を掘り起こすかのようにゆっくりと、当時の様子を語ってくれた――。
彼女の話によると……十四歳で王国立魔術校の中等部を卒業した翌年、揃って離宮へと入り切磋琢磨していたレミュールとマーシャの内心には強い焦りがあったのだという。それは同期のラナだけが、聖女としての力を発揮し始め、彼女よりひとつもふたつも先へと進んでしまったからだった。
それでも、少なくともレミュールはもしラナがジェラルドに見初められ、月の聖女と王妃というふたつの特権を手に入れようとも、ずっと友人でいられると信じていた。ラナは権力を笠に着て、人に何かを強いるような人間では無かったし……マーシャもともすればぶつかりがちな自分とラナの間に立って、よく間を取り持ってくれる優しい心を持つ少女だったから。
「マーシャは……おかしくなってしまったの。ある事件がきっかけで……私たちと過ごした三年間のことを全て忘れてしまった。そしてラナはその時に死んでしまったから……マーシャは覚えていないのよ。自分の本当の年齢も、ラナがいたことも……自分がしてしまったことも」
静かな夜、薄明かりが照らす部屋の中で……レミュールは古い記憶を掘り起こすかのようにゆっくりと、当時の様子を語ってくれた――。
彼女の話によると……十四歳で王国立魔術校の中等部を卒業した翌年、揃って離宮へと入り切磋琢磨していたレミュールとマーシャの内心には強い焦りがあったのだという。それは同期のラナだけが、聖女としての力を発揮し始め、彼女よりひとつもふたつも先へと進んでしまったからだった。
それでも、少なくともレミュールはもしラナがジェラルドに見初められ、月の聖女と王妃というふたつの特権を手に入れようとも、ずっと友人でいられると信じていた。ラナは権力を笠に着て、人に何かを強いるような人間では無かったし……マーシャもともすればぶつかりがちな自分とラナの間に立って、よく間を取り持ってくれる優しい心を持つ少女だったから。