冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 誰かがレミュールの被っていたブランケットを剥ぎ取り、大きく肩を揺さぶる。ベッドに寝かされた、背格好も髪の色も同じレミュールの後ろ姿を見て、マーシャだと勘違いしているのだ。無理もない……ここは彼女の寝室なのだから。

(マーシャは外に……っ!) 

 なにが起こったのか思い出したレミュールは跳ね起き、驚いた様子で自分を見てきた同じ聖女候補の少女に掴みかかる。

『マーシャは……あの子はどこに行ったの!』
『レミュール!? なんであなたがここにいるの!? じゃああの噂は本当!?』
『噂!? と、とにかく、マーシャを探して!』
『……こっちに来て』

 少女はレミュールをラウンジへと連れて行く。そこでは離宮のほぼ全員が集まって騒然となっていた。

『――本当なのよ、あたし見たんだから! 血が、地面にぶわって広がってさぁ……あっ』

 大袈裟な身振り手振りで話す、これもまた聖女候補のひとりに、レミュールは駆け寄る。
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