冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 亡くなったラナと、消えたマーシャ。一気にふたりの友を失い、レミュールは沈んだ日々を送る……。聖女の力の源泉は強き願いだと知ってはいたが、こんな自分が……友のために何もしてあげられなかった自分が何を望もうというのか。かと言って、何もかも忘れて外の世界に戻ることが果たして正しいのかと、胸に重たい思いを抱えたまま。

 多くの同輩が聖女になることを諦める中、ジェラルドは離宮を後にする者を止めなかった。そればかりか生活を保障する多くの金銭を与え、自分たちの都合で若い彼女たちの多くの時間を奪ったこと詫びて送り出した。それからしばしの時が経ち、ある日ジェラルドがひとりの女性を伴い離宮へと訪れた。

 その姿を見たレミュールは、大きく動揺せざるを得なかった。事件から三年が経ち、少し雰囲気は大人びたものの、それは、マーシャ・レード本人に違いなかった。

 懐かしさと再会の嬉しさや、無力だった自分への後悔に突き動され、レミュールはマーシャに駆け寄ると強く抱きしめていた。だが……。

「あの……どこかでお会いしたこと、ありましたでしょうか?」

 その言葉と、マーシャのきょとんとした表情が痛切に胸に刺さる。
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