冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
キースと王太子
「や~、忙しい忙しい……。こうも忙しいとさすがにメイアナに茶でも淹れてもらいたくなりますが……店に伺う暇も無し、と」
執務室に響いた孤独なテノールボイスは、他ならぬ魔法騎士団副団長キースのものだった。彼は書面に軽快に走らせたペンを置くと、一区切りついたか立ち上がり首を鳴らす。
口をへの字に曲げた彼の視線の先には空席の団長の机がある。
「まったく、愚痴を聞いてくれる人間もいないと、嫌になりますね……。この年で肩凝りに悩まされたくは無いし、早く帰って来てほしいものですが……今頃団長たちもどうしていることやら。おや?」
振り向いて窓を見つめ、遠くにある隣国の空を見つめつつ嘆いていたキースの後ろで、慎重なノック音が響いた。身内の部屋だ、いつもならばここまで気を使う人間は、この団には居ない。となれば来客……連れている人間の方が相当位の高い人間である、そんな可能性が頭によぎった。
「面会の予定は立てていなかったはずなんですがねぇ……仕方ない。どうぞ、お入りください……!」
「……失礼します」
執務室に響いた孤独なテノールボイスは、他ならぬ魔法騎士団副団長キースのものだった。彼は書面に軽快に走らせたペンを置くと、一区切りついたか立ち上がり首を鳴らす。
口をへの字に曲げた彼の視線の先には空席の団長の机がある。
「まったく、愚痴を聞いてくれる人間もいないと、嫌になりますね……。この年で肩凝りに悩まされたくは無いし、早く帰って来てほしいものですが……今頃団長たちもどうしていることやら。おや?」
振り向いて窓を見つめ、遠くにある隣国の空を見つめつつ嘆いていたキースの後ろで、慎重なノック音が響いた。身内の部屋だ、いつもならばここまで気を使う人間は、この団には居ない。となれば来客……連れている人間の方が相当位の高い人間である、そんな可能性が頭によぎった。
「面会の予定は立てていなかったはずなんですがねぇ……仕方ない。どうぞ、お入りください……!」
「……失礼します」