冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 王太子の配慮にキースは無言で首を垂れる。これでリュアンと同い年だと言うのだから、頼もしい限りだ。将来戴冠した暁にはきっと賢帝になって、この国を力強く導いてくれることだろう……。
 
 おそらく今回は、リュアンたちの力だけで目的を達成して帰還することは困難……。そう考えたキースは、王太子に今起こっている事情――聖女の資格者が現われたという時期からしておそらく、セシリーたちがガレイタム王国の者に連れ去られたであろうことと、リュアンたちがそれを追ってここを発ったことを明かす。

「そうか。クライスベル……つい最近爵位を買い上げたあの伯爵家の娘が月の聖女の血を引いていたとはな。しかし、君もリュアン殿に言ったのだろう? 彼女がそういう出自であったのなら、ファーリスデル側として返還を求めることはできないと」
「ええ……ですが、セシリー嬢は旅立つ前、明確にこちらに所属する意思を示していました。我らからすれば彼女はもう、立派な仲間なのです。もし、彼女のが望んでガレイタムに帰順したのであれば、我らの口の挟むところではありません。……しかし、もし彼女が無理矢理攫われる形で拘束されたのであれば、我らはなんとしてでも……」
「君ほどの男がそこまで言うとはね……」
「殿下、どうか御助力をお願いできないでしょうか」

 キースは深く頭を下げ、彼の言葉を待つ。難しい顔をした王太子が口を開きかけた時だった。
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