冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「いえいえ、たまたま気付いただけですから」

 白い犬の後ろ脚の包帯に気づいて深く頭を下げ、赤髪の騎士は訪問の目的を尋ねてきた。

「それで本日はどうされたんでしょう? ちなみに昨日の奴ならばっちり牢屋にぶち込んでやりましたから、もう心配ないですよ!」
「そうなんだ。安心したわ、お仕事ご苦労様です。実はそのことで、ええと……魔法騎士団団長のリュアン様におわびとお礼をさせていただこうと伺ったのだけれど、お目通り願えるかしら?」

 かがんでいたセシリーが体を起こすと、リルルと呼ばれた犬は「離さないぞ!」とでも言わんばかりに足にしがみつこうとする。そこを男の子がしっかりと押し止め、彼を抱きかかえると指で敷地の奥の方を示した。

「こ~らリルル、あんまりお客様に失礼なことしちゃダメだってば! おわびっていうのはよく分かんないけど、とりあえず歓迎します! 本部に一緒に行きましょう!」
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