冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

娘の幸せ

 話の区切りがつき、リュアンは顔を上げる。

「その後俺は……聖女の死の原因を作ったとして、父――オルコット王から隣国への国外追放処分を命じられました。万一月の聖女の代わりとなる者を見つけるか、もしくは兄ジェラルドになにか異変があった時のみ、国内に帰還することを許すという条件で……」

 その後レイアム第二王子は長年の友好の間にファーリスデルと取り決めていた、問題を起こした貴族たちの受け入れ先のひとつであるヴェルナー侯爵家へと迎え入れられ、リュアン・ヴェルナーとして名を改めた。

 心に大きな傷を負ったリュアンが立ち直るには相応の月日が必要だったが、彼はラナの言い残したことを思いだし、亡くなった彼女の意思を継いで少しでも彼女に報いようと顔を上げた。そんな彼を厳しく叩き直してくれたのが、ヴェルナー家の当主クライデン・ヴェルナーという人物だったという。

 『多くの人を守りたければ、その禍根を断たたねばならない――』……そんな教えを受けたリュアンは騎士学校へと進み、魔物や魔法を悪用する人物から人々を救うため、魔法騎士を志すことになったと、リュアンは苦渋の滲む表情で続け、王家にまつわる事情を明かされたオーギュストとラケルは、深く息を吐いた。
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