冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
そうリュアンも続け、オーギュストは言葉を黙って聞いた後、険しい目つきをしてふたりに忠告する。
「娘をこの国から連れ出すとでも……? ……娘の身を案じここまで来てくれたことには礼を言わねばなりませんな。本当に感謝している……だが、君たちも国家に所属する人間として、悪戯にガレイタム王国を刺激するような行動を取るわけにもいかないでしょう」
「それはわかっています。でもとにかく、彼女の意思だけは確かめたい。オーギュストさん、どうにかして彼女に会わせていただくことはできませんか?」
「残念ながら、私はこの国ではお尋ね者のようなものなのですよ……特にこの王都ではそれなりに顔が知れてしまっている。ジェラルド様も少なくとも、娘が月の聖女として務めを果たす約束をするまでは私を娘に会わせるつもりはないでしょうし……」
「ぼ、僕がその離宮とかいうのに忍び込んで……リルルと一緒に連れ戻すとか」
「やめておけラケル。さすがに離宮といえど王家の所有物。容易く入れるほど甘い警備じゃない」
「わかりますけど……」
その時、小さな鈴の鳴るような音がかすかに聞こえ、ラケルは自分の懐に忍ばせた金属板――預かった通信用魔道具を取り出す。
「娘をこの国から連れ出すとでも……? ……娘の身を案じここまで来てくれたことには礼を言わねばなりませんな。本当に感謝している……だが、君たちも国家に所属する人間として、悪戯にガレイタム王国を刺激するような行動を取るわけにもいかないでしょう」
「それはわかっています。でもとにかく、彼女の意思だけは確かめたい。オーギュストさん、どうにかして彼女に会わせていただくことはできませんか?」
「残念ながら、私はこの国ではお尋ね者のようなものなのですよ……特にこの王都ではそれなりに顔が知れてしまっている。ジェラルド様も少なくとも、娘が月の聖女として務めを果たす約束をするまでは私を娘に会わせるつもりはないでしょうし……」
「ぼ、僕がその離宮とかいうのに忍び込んで……リルルと一緒に連れ戻すとか」
「やめておけラケル。さすがに離宮といえど王家の所有物。容易く入れるほど甘い警備じゃない」
「わかりますけど……」
その時、小さな鈴の鳴るような音がかすかに聞こえ、ラケルは自分の懐に忍ばせた金属板――預かった通信用魔道具を取り出す。