冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
パレードを控えて
今、ガレイタムの王都では至るところで艶やかな飾りつけがされ、通りを歩く人々もどこか浮き立った様子だ。屋根から屋根へ至るところにロープが吊るされ、国旗を模したペナントが風にそよいでいる。
離宮の一室にてバルコニーから町を見下ろしていたセシリーは、その様子がどこか別世界の出来事であるかのように、ぼんやりとした視線を送っている。
「……あんまり不安にならなくても大丈夫よ、セシリー。ジェラルド様の隣に立って、笑顔で皆に手を振ってくれればそれで大丈夫だから」
「はあ……」
背中にそっと手を添えて勇気づけてくれたレミュールには申し訳ないが、今も生返事しか返すことができない。
あれからあっという間に一週間以上が過ぎ、今週末の日曜、セシリーは月の聖女としてジェラルドの隣に立ちパレードに出席する。セシリーの希望により今回は王妃としてではなく、あくまで聖女として国民にお披露目を行うとのことだが、彼の隣に立てば、周囲から自動的に婚約者として認知されてもおかしくはない。それをわかっていても、未だセシリーの中で自信を持ってこうすべきだと言える答えは出ないままだ。
離宮の一室にてバルコニーから町を見下ろしていたセシリーは、その様子がどこか別世界の出来事であるかのように、ぼんやりとした視線を送っている。
「……あんまり不安にならなくても大丈夫よ、セシリー。ジェラルド様の隣に立って、笑顔で皆に手を振ってくれればそれで大丈夫だから」
「はあ……」
背中にそっと手を添えて勇気づけてくれたレミュールには申し訳ないが、今も生返事しか返すことができない。
あれからあっという間に一週間以上が過ぎ、今週末の日曜、セシリーは月の聖女としてジェラルドの隣に立ちパレードに出席する。セシリーの希望により今回は王妃としてではなく、あくまで聖女として国民にお披露目を行うとのことだが、彼の隣に立てば、周囲から自動的に婚約者として認知されてもおかしくはない。それをわかっていても、未だセシリーの中で自信を持ってこうすべきだと言える答えは出ないままだ。