冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
その時セシリーは完全に放心していた。
父が来ることは前々からジェラルドから聞かされていたのでいいとして、先頭にいたのは橙に近い金色の髪と目をした高貴な青年。ファーリスデルの王都に住まう者なら一度は目にしたことがあるだろう他ならぬ王太子の姿である。
「やあ、久々にお目にかかるが、ジェラルド殿は御壮健であらせられる様子でなにより。そしてお初にお目にかかる、月の聖女殿。我が名はファーリスデル王国の王太子を務める、レオリン・エイク・ファーリスデルと申す者だ。そちらは今はまだ……セシリー・クライスベルとの御名で呼ばわってもよろしいか?」
「あ……ぅ、は、はい……そうです。お、お会いできて光栄にございます」
快く彼がジェラルドと握手した後、その手を自分に差し出してきたので慌てて手を取る。
なんとか挨拶を返すことができたのは、ここ数日でこの面談に際して相当な回数の反復練習を積んだ成果と、ジェラルドが背中を叩いて気付けしてくれたことのおかげだった。それが無ければ棒立ちで突っ立ったまま数分は口を丸く開けていただろう。
父が来ることは前々からジェラルドから聞かされていたのでいいとして、先頭にいたのは橙に近い金色の髪と目をした高貴な青年。ファーリスデルの王都に住まう者なら一度は目にしたことがあるだろう他ならぬ王太子の姿である。
「やあ、久々にお目にかかるが、ジェラルド殿は御壮健であらせられる様子でなにより。そしてお初にお目にかかる、月の聖女殿。我が名はファーリスデル王国の王太子を務める、レオリン・エイク・ファーリスデルと申す者だ。そちらは今はまだ……セシリー・クライスベルとの御名で呼ばわってもよろしいか?」
「あ……ぅ、は、はい……そうです。お、お会いできて光栄にございます」
快く彼がジェラルドと握手した後、その手を自分に差し出してきたので慌てて手を取る。
なんとか挨拶を返すことができたのは、ここ数日でこの面談に際して相当な回数の反復練習を積んだ成果と、ジェラルドが背中を叩いて気付けしてくれたことのおかげだった。それが無ければ棒立ちで突っ立ったまま数分は口を丸く開けていただろう。