冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「ラケルって楽しい人ね。もしよかったら、私とお友達になってくれない?」
「え、いいんですか? 嬉しいな! それじゃ後で同僚たちにも紹介しますね。大丈夫、皆いい人ばっかりだから」
「ありがとう、助かるわ」
「ワフッ!」
「もちろんあなたもね、リルル!」

 ラケルの腕の中から自分もと主張したリルルを撫で、仲良くなって緊張もほぐれたところで、魔法騎士団本部の入り口が近づいた。ラケルはリルルを繋いできた後、すぐに受付に取り次いでくれ、セシリーはそこで告げられた内容に大きく口を開いた。

「――団長たちならクライスベル家を訪問すると、少し前に出られましたけど」
「ええーっ!? それってウチなんですけど! どうしよう……! 私、急いで帰らなきゃ」

 慌てて身を返そうとしたセシリーの手首をラケルが掴む。

「ごめん、僕が団長の予定をちゃんと聞いておけばよかった。ロージーさん、ちょっとこの子、送ってきます! セシリー、捕まって! 《風よ、我が身を空へ運べ》!」
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