冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 クライスベル邸に帰った後、エイラはセシリーとの再会を祝ってくれた。しかしそれはどこかぎこちなく……彼女の表情は浮かなくて、あまり目も合わせてくれなかったのだ。心配を掛けた自分に怒ってるのかとも思ったがそういうわけでもなさそうで、何だかよそよそしくて違う人と話しているような気分だった。

「気にしない気にしない。身体の調子が戻ればすぐに元通りになるわよ。元気出しなさい!」

 ロージーに背中を叩いてもらい、気を取り直していると、背後から声が掛けられた。

「――おかえりなさい、セシリーさん。彼から話は聞きました……よく頑張りましたね」
「キースさん……」

 おなじみの柔らかい笑みを見せたのはキースだ。セシリーは進み出た彼が紳士らしく差し出したその手を両手で握り返した。

「色々ありがとうございました。王太子様に私が戻れるように掛け合って下さったって聞きました……」
「礼には及びません。美しい女性の助けになるのが我ら男性の本懐といえますし、それに我らの団もロージーだけだと華やかさに欠けますのでね。エイラさんも戻ってしまわれましたし……」
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